ひとりのセラピストのひとりごと

ひとりのセラピストのひとりごと

手に職つけた、ひとりのセラピストのブログ。意識低い系。

パーキンソン病のケアについて考える。治療よりもケアが重要な疾患。患者と医療者の受け止め方。

世の中にはいろんな疾患がありますが、治療に限界がある病気は工夫と心持ちがとても大切になります。

パーキンソン病も「どう受け止めるか、どう生きていくか」を考えることがとても大切です。

今日は私が臨床で出会ったパーキンソン病という病気について、どうケアしていくかを考えます。

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難病指定もされているパーキンソン病。一般的な治療と経過

パーキンソン病は難病指定されている病気です。

治療は薬とリハビリで進行を遅らせることがとても重要になります。

 

パーキンソン病とは

パーキンソン病では、主に、手足がふるえる(振戦)、動きが遅くなる(無動)、筋肉が硬くなる(固縮)、体のバランスが悪くなる(姿勢反射障害)、といった症状がみられます。これらによって、顔の表情の乏しさ、小声、小書字、屈曲姿勢、小股・突進歩行など、いわゆるパーキンソン症状といわれる運動症状が生じます。

パーキンソン病の症状|パーキンソン病の基礎知識|パーキンソン病 サポートネット

 

 メカニズムとしては大脳黒質のドーパミンが出にくくなり、運動機能に障害が出る病気です。

そのためドーパミンの薬「レボドパ」を投与しますが、量の調整が難しく、多すぎても少なすぎても症状が強くなったり、適量だったとしても日によって調子のいい日と悪い日が極端に出現する「on-off現象」が現れることがあります。

最初は無意識に指先が震える振戦や、歩くときにだんだんと歩幅が狭くなり、つまづきやすくなってしまう突進現象が現れます。

共に現れるのが表情が希薄になる仮面様顔貌、自分から動かなくなってしまう無動などです。

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こちらはNTT東日本病院リハビリテーション科のセラピストが書いた書籍です。

急性期病院で見られる様々な疾患の解説が分かりやすく書かれています。

PT、OT、STだけでなくマッサージ師にもリハビリとはなんぞや?が分かる一冊になっています。

リハビリテーションビジュアルブック第2版

 

パーキンソン病のリハビリ治療

パーキンソン病では運動反射が出にくくなります。

歩行は常に反射が出ている無意識要素の強い運動です。バランスを取るために反対の足が出るようになっていますが、パーキンソン病の方は反射的に足が出ません。

このため歩幅の調節ができなくなり、前方にバランスを崩してしまい転倒しやすくなります。

リハビリではこの対処として床に目印をつけて、目視でバランス調節をするようなトレーニングを行います。

また表情筋も動かなくなるので、発語のトレーニングをしたり、嚥下機能を保つために首や喉のストレッチをします。

このような積極的な訓練をやっている施設は病院の他に専門のセラピスト(PT、OT、STなど)のいるデイサービス機能訓練などがあります。

 

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パーキンソン病のリハビリの問題点

私がマッサージ師だからかもしれませんが、全ての患者さんがこのような積極的なリハビリをしているというわけではないように感じています。

 

パーキンソン病の患者さんは進行で介護度が重くなります。

介護度の重くなった患者さんは高齢者施設に入所していることがあり、施設によってはリハビリ専門のセラピストが在籍していないことがあります。

セラピストがいないとリハビリを行うことができません。

 

患者さんはリハビリを受けずに介護だけを受けているという場合があります。

私は重症のパーキンソン病患者さんに何人かお会いしてきましたが、全員が積極的なリハビリをしていないという状況でした。

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マッサージとパーキンソン病

マッサージは治療よりもケア要素の強い対症療法です。

そのためマッサージ師の患者さんにもしばしばパーキンソン病の方が見られます。

パーキンソン病は基本的にだんだん進行していく病気なので、悪化している患者さんも珍しくありません。

話すことができなくなっていたり、自分で歩くことができなくなっている方もよくお会いします。

 

マッサージ師がパーキンソン病の患者さんにできることは、他の傷病と全く同じで拘縮予防やストレッチなどの運動療法です。

パーキンソン病の患者さんは筋肉が動きにくくなる「強剛」という状態がよく見られます。

これを放置していると関節も拘縮してしまいます。

人体に負荷をかけずに安全に運動をさせてあげることがとても大切です。

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もう一人で苦しませない。パーキンソン病の患者さんのためにできること

教科書や参考書、医学系の解説サイトには難病であるパーキンソン病について病気の進行過程や症状、評価の仕方などが書かれていますが、マッサージ師としてパーキンソン病に関わっていると、足りない説明があると感じます。

 

パーキンソン病は回復方向へ進むことが、現段階の医学では不可能な難病です。

そのため治療はいかに進行を遅らせるかが重要になります。

リハビリ分野では残存機能で出来ることを増やす目的で様々な訓練が行われていますが、患者さんの葛藤まではどんな書籍にも書かれていません。

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「行き止まり」の症状。私が出会った患者さんの話

私が以前勤めていた病院にはパーキンソン病がこれ以上は進まないほどに進行した患者さんがいました。

マッサージ師の私がリハビリを担当しましたが、半年間担当した間にとても進行してしまい、薬の意味を感じないほどになっていました。

 

高齢の女性で、とても美意識が高く、整容に気をつけている方でした。

 

言葉はすでに失っていて、コミュニケーションは全く取れません。

パーキンソン病は下肢が先にやられてしまい、歩くことが困難になります。

オーダーは歩行訓練でしたが、起立はできるものの足が前に出ずに全く歩くことができない状況でした。

それでも良い日は数メートル、介助にて歩行しましたが、症状進行のため危険と判断し「今日は立つだけにしましょう」という日がほとんどになりました。

嚥下機能も低下し、終始よだれが口から出てしまっていました。

彼女は他人の目を気にしている様子で、かろうじて動く両手でタオルを口に当てていました。

 

彼女は話すことができなくなってしまい、表情も失い、タオルを手に取り口に当てることしかできなくなってしまいました。

 

何か言いたいことがあっても、少ない動きでジェスチャーで伝えることしかできません。

私はいつもと違う動きを見かけると、他のスタッフを呼びに行き、これはどんな意味があるの?と聞くことで彼女の言っていることを聞き取っていました。

周りの人たちの連絡がなければ、誰も彼女の言っていることが分かりません。

 

彼女はパーキンソン病という病気の中に閉じ込められてしまっていました。

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何か様子がおかしいと思っても、誰にもわからない時もあります。

私ができることと言えば、とにかく観察して考え、想像することでした。

 

あるとき、「リハビリに来ました」 と声をかけると、じっと私を見つめることがありました。

私は何か言っているのだと思い、目線を合わせ表情を読み取ろうとしましたが、仮面をつけたようなピクリともしない顔からは何を読み取ることもできませんでした。

私がそのまま膝をついて彼女の手を握り「ごめんね、分からないです。今、一生懸命考えているけれど、私には分からない・・・」と言うと、彼女はまばたきすら難しい目から涙をこぼしました。

 

私をじっと見つめている、やっと動かせる眼球と、その端から溢れ落ちた涙を見ていると、

何を言っているのかは分からないけれど、私にできることと言えば、一緒に涙を流すくらいのことでした。

 

日々動かなっていく体、握ると温かい手、失った言葉と表情・・・

彼女はクリア(意識の混乱がないこと、自分の状況が分かっていること)でした。

 

こんなに動かなくなっても、クリアなんです。

 

きっと想像を絶する苦しみがあると思います。

 

 

病気に閉じ込められてしまう。

パーキンソン病の患者さんは、恐ろしく孤独であると思います。

 

薬もリハビリも十分な治療ではない。パーキンソン病は治療の先に目標がある

薬を飲んでも、リハビリをしても、パーキンソン病は止めることができません。

どんなに気をつけても、症状が止まったり、治ることがありません。

これはきっと患者さんにとってもご家族にとっても辛い現実であると思いますが、私たち医療者や介護スタッフができることは、その先にあるのだと思います。

 

人の心はしなやかにできています。

病気になってしまっても、どれほど苦悩しても、時にはその中から希望を見つける力を持っています。

 

私は常に、パーキンソン病の患者さんにこう伝えていました。

 

昨日と、今日と、明日は、違う。

今日できることをやりましょう。

できるだけ楽しいことをやりましょう。

 

パーキンソン病に限らず、治癒しない病気の患者さんは日によって調子が全く違います。

特に末期になっていくと、明日はもうリハビリをできないかもしれない。

中止の連絡はいつも突然来ます。

明日のことは誰にも分からない。

今日よりもずっと元気かもしれないし、今日よりもずっと悪いかもしれない。

神様にだって分からないです。

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患者さんにとって大切なのは、昨日でも明日でもないし、リハビリでも治療でもありません。

今、この瞬間を、楽しく過ごしてもらうこと。

はしゃぐような元気がないのなら、できるだけ気持ち良く、穏やかに過ごしてもらうこと。

それ以外に大切なことなんて、私には考えられません。

 

リハビリよりも大切なこと。マッサージ師ができること。

リハビリ系のセラピストに比べて、マッサージ師は消極的治療であると私は思います。

マッサージ自体が対症療法であり、治療という属性をあまり持ちません。

その瞬間を心地よく過ごしてもらうことが、マッサージの一番大切なことであると考えています。

 

リハビリは目的のあるものです。

生活が自立できるため、安全に歩けるため、食事をきちんと取れるため・・・

目的があるのでしっかりした訓練をします。

 

でもマッサージは、目的がありません。

何のためでもないのです。

ただこの瞬間を、穏やかに過ごしてもらうため。

そしてできれば、次にマッサージを受けることを楽しみにしてもらうため。

 

薬やリハビリは治療のためですが、マッサージは癒し以外の何でもないと思います。

 

そういうマッサージについて、保険医療でやるなんて、と反論する人たちもいますが・・・

人間にとって、治療は現実と戦う行為です。

治療はとても苦しいものです。

治療が長くなる人ほど、癒しが必要です。

人間に癒しは絶対的に必要であると私は思います。

そして疾病を持っている人ならば、それを保険治療の一環で行うことは必要な医療です。

 

看護師さんのよく仰る「キュア(治す)よりもケア(癒す)」がマッサージであると私は考えています。

 

キュアとは、「治す」。病気や怪我を治すための医学的処置で、原因となる病気をなくすこと。その後医療を受ける必要をなくすことです。
ケアとは、「癒やす」。「治療を目指すこと以外の医療の側面にも心遣いしましょう」という概念。痛みの軽減や悩みを共有して、生きる時間の質を高めるための活動です。

キュアとケア | こころみ

 

人はしなやかですが、病気と戦うことを生涯続けることはできません。

時に逃げる場所、癒される場所が必要です。

 

ご高齢な患者さんはすでに十分戦ってこられた。

ある程度の治療を施したら、穏やかに暮らす環境を整えたり、手伝ってあげることが大切です。

 

なぜなら、人間は、生き物だから。

人には心があり、命があります。

 

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パーキンソン病の患者さんにとって大切なことは、治療だけではありません。

どれほど医療者が考えても、キュアとケアを模索しても、きっと患者さんの苦しみはなくならないのだと思います。

でも、減らすことはできる。

 

そしてそれを手伝うことができるのは、マッサージ師ではないかと、私は思います。